中学校でインプロワークショップをしてきました

昨日は日野さんからのお誘いで、即興実験学校やSAL-MANEの仲間と共に、日野さんの母校である中学校にインプロのワークショップに行ってきた。

今回のワークショップは対象が多感な中学生であり、また学校の授業の一環として行われたことから、最初の雰囲気は固かった。しかし、およそ1時間半という時間の中で最終的には一定の成果を残せたように思う。

そこで、ここでは昨日のワークショップの簡単な振り返りを書いてみようと思う。

1. プレイヤーとしての自分を使う

今回のワークショップを振り返ると、自分のワークショップはかなりプレイヤーとしての自分を使っていることに気づいた。

最初にインプロを説明する段階で短いひとりインプロを見せたり、ゲームの説明でも積極的に自分が入ったり、チームごとに見せあうときはショーのMCのように働いていた。

これは「ワークショップの中心は参加者であって、ファシリテーターは黒子であるべき」というよくありそうな言説からは外れるかもしれない。

けれど、今回一番の目的であると考えていた「ハッピーに失敗できる」雰囲気を作るためには、それが必要だったと思う。反対に、そうしなかった場合はインプロがただの教訓になっていたのではないかと思う。(もちろんそうしなかったバージョンとの比較はできないので、主観によるものでしかないけれど。)

2. 見せることは大事

さっきの内容とかぶるかもしれないけれど、インプロを教えるときにはまず見せることが大事だと思った。特に今回のように、インプロを全く知らない人に対してはそれは必要なことだと思った。

僕は最初にインプロを説明する段階で場所のアイデアを生徒からもらい、そのアイデアで30秒くらいひとりインプロをした。そしてそれはその後のワークショップを進めていく上でとてもよく働いたと思う。(これも比較はできないので主観によるものでしかないけれど。)

これも「ワークショップは参加者たちが自発的に何かを生み出すものであって、ファシリテーターがお手本を見せるものではない」というこれまたよくありそうな言説からは外れるかもしれない。

けれど、インプロを全く知らない人に対してゲームを教えても、それは楽しいものではあっても、結局は「やらされているもの」で終わってしまうだろう。しかし、もし実際のインプロを見てそれに興味を持ってくれたなら、そこでやることは「やりたいこと」に変わるかもしれない。(ちなみにインプロを見て興味を持たなかった場合は、別にやらなくてもいいと思う。学校でこういう対応をするのは難しいかもしれないけれど。)

3. 安全な場所を作る

今回行った中学校の生徒は、インプロを見ることに対しては驚くくらい反応がよかったけれど、実際にやるとなると文字通り後ろに下がってしまう生徒が多かったように思う。

今回のワークショップでは、キースの言うとおり「安全な場所を作る」ということがとっても大切なのだということを学んだ。本当に、その状態でないとこれも文字通り何も変化が起きない。

しかし逆に言えば、これまで書いてきた興味と安全な場所さえ作れれば、ワークショップはたしかに参加者が中心となり、自発的に何か生みだす場所になる可能性があるとも思った。

ワークショップに関する言説はある種の状態においては働く、けれどそのある種の状態を作ることは思っている以上に難しい。そして世の中にはその状態が作れていないのに(ファシリテーターですらその状態になっていないのに)、その状態だと「仮定」して進めてしまっているワークショップも多いのではないか、ということを考えたりもした。

最後は話がずれてワークショップ自体についての話になってしまったけれど、昨日のワークショップを終えたらそんなことを思った。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter