いいインプロバイザーは安全な場所を作り、安全な場所はいいインプロバイザーを作る

先日INNERSPACEのワークショップにお邪魔したらとっても雰囲気が良くて、キースの言う「安全な場所を作る」ということについて改めて考えさせられた。

最近のSAL-MANEの稽古場は、「うまいインプロをしよう」と思っていた時期と比べるとずいぶんと気楽で楽しい場所になってきていたけれど、もっとポジティブなフィーリングで満たすことができると思った。

そして、キースのワークショップから帰ってきたさんまが「安全な場所を作る」ということについて次のように語っていたことを思い出した。

キースの安全ぶりを感じたのは、満足したら出て行くっていうワーク(リービングゲーム)をやったとき。前で一人が何かやって、見ている人は「もう見なくていいや」って思ったら出て行くっていうワークを舞台の裏で2回やった。

5日目にやったときと最終日にもう1回やったときで全然雰囲気が違った。みんなが助け合ってたし、キースはただそれを見守ってるだけだったし、10日間かけて安全な場所にしたんだなってその時に強く感じた。

5日目は出る人は大体一人だったし、周りもボランティアを頼まれたら出てくるって感じだったんだけど、最終日にやったらみんな誰かが困ってたらすぐ助けにいってた。3人でも4人でも5人でも。

一人で出るとかボランティアを連れてきてもいいっていうルールはもう完全になくなってるし、場もそれをやっていい雰囲気になってるし、皆実際にやれるし。そういう風に10日間でなったんだなって思った。

キース・ジョンストンのワークショップの感想を聞いてみました Vol.2

当時の僕はうまいインプロバイザーになることを目指していたし、それは個人の力だと思っていたので、この話にはそれほど惹かれることはなかった。けれど、今はこれがとっても大事なことなのだと思うようになった。

「安全な場所を作る」というテーマで稽古に臨むようになったのは最近だけれど、すでに少しずつその成果は出ていて、そうするとみんなのインプロが如実にうまくなるという実感を得ている。この前の稽古の後半では、僕はただ「みんなインプロうまいなー」と思いながら見ているだけでよかった。

しかし、安全な場所を作るということは個人でできることではない。それはそこにいる集団で作るものなので、誰かがネガティブなフィーリングを持ち込めばすぐに消えてしまう。そこには「安全な場所がいいインプロバイザーを作る」とも言えるし、「いいインプロバイザーが安全な場所を作る」とも言える循環関係がある。今回「安全な場所を作る」というテーマを稽古に持ち込んだのは僕だけれど、それを形にしたのはそこにいたメンバーだった。

SAL-MANEというチームは良く言えば個性豊か、悪く言えば統一感が無くて、「なんでこの人たちが同じ舞台に立っているんだろう」と毎月のように思うのだけど(笑)、そこが安全な場所であればそれでも大丈夫だし、むしろお互いから刺激を受けられるということがよく分かるようになった。そして、チームでインプロをするということは楽しいことなんだな、と改めて思った。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter