インプロは即興である

「インプロは即興である」

これは当たり前のことだと思っていたけれど、本質的には自分は即興をしていないのではないか、ということに最近になって気づいた。僕はインプロは究極的には遊び(Play)だと思っているのだけど、即興を本当に遊んでいるかというと、それは疑わしいと思った。

インプロは本来即興だから、何が起こるかは分からないし、思い通りにいかないこともある。それは当たり前のことなのだけど、多くの場合自分はそれをネガティブなこととしてとらえていると思った。アイデアが無いと焦り、オファーが通らないとガッカリする自分がいた。

もちろんアイデアはあった方が落ち着くし、オファーは通った方が嬉しい。けれど即興を遊ぶということは、アイデアが無かったりオファーが通らなかったりすることも含めて楽しむことなのだと思う。

僕は「探究心」や「遊び心」という言葉が好きなのだけど、前者ではシリアスすぎて後者ではポップすぎる時には「好奇心」という言葉を使うのがいいと思っている。そして、そんなことを考えた時にWikipediaを見てみたら次のような文章があった。

目新しいものに出会ったとき生まれるその他の心情としては恐怖が挙げられる。ヒトが目新しいものにぶつかった場合は、まず驚愕が先に立ち、それから好奇心が生まれるか恐怖が生まれるかのどちらかである。(好奇心

未知に対して恐怖を感じることは、動物としてある程度正常な反応だと僕は思っている。赤ちゃんのように見かけたもの全てを口に入れようとしては、人は生きていくことはできないだろう。

しかし、インプロをする上ではその恐怖は役に立たない。インプロでは未知に飛び込んだ方が面白くなり、未知に飛び込まないとどこにも行けずに終わってしまう。

人は成長するにしたがって、過去の経験に基づいて未来のことを決めようとする。もちろんそれも悪いことではないけれど、それによって今ここで起きていることを見逃しているなら、そこにある可能性に目を向けてみることもいいだろうし、即興するとはそういうことなのだと思っている。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter