ワークショップにおける「批判しない」について

ワークショップでよく言われる「批判しない」ということは、単に批判的なことを言わないというだけではなく、本当に批判的な心を持たないことが大事なのだと思う。たとえ批判的なことを言わなくても、そこに批判的な心があればそれはどうしたって伝わってしまう。

本当は心の中で相手を批判しながら「いいですよー」と言うよりも、心から相手を受け入れながら「バカだなー!」と言えるほうが僕はずっと尊いことだと思う。そして自分が許せないと思っていることを本当に許している人がいれば、それだけで何かが変わっていく。

でもこれはあくまでも理想型だから、実際には常にそこを目指していく過程なのだと思う。「批判的な心があるのだから批判すればいい」と開き直る(実際には感情に囚われている)のではなく、「人を批判してはいけない」というルールに囚われるのでもなく、批判している心に気づいたらただそれを流していく。そうしているうちに自分がだんだんとクリアになっていく。

人はすぐに「どうすればいいのか」を知りたくなるけれど、それよりも「どうあればいいのか」を知ることの方が大事なのだと思う。それは一足飛びにはいかないもどかしい過程だけれど、そういう風にしか進んでいくことはできないし、僕はそういう風に進んでいる姿自体にある種の美しさを感じる。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter