どうしてアレクサンダーテクニークとインプロを一緒にやっているの?

アレクサンダーテクニークとインプロのワークショップは何度か行っていて、「興味ある」という方は多いのですが、同時に「どうしてアレクサンダーテクニークとインプロを一緒にやっているの?」と聞かれることも多いので、それについてちょっと書いてみたいと思います。

僕がアレクサンダーテクニークに出会ったのは、ちょうどインプロと同じ大学三年生の時でした。当時の僕はバイトとして進学塾の講師をバリバリやっていたのですが、バイトを頑張りすぎた結果腱鞘炎に近いものになってしまいました。

僕は国語の集団授業をやっていたので板書が多かったし、長期休みには1日7時間授業をする、といったこともあったので、腱鞘炎になっても仕方ないと言えば仕方ない状況ではありました。しかし同時に「同じだけ授業をしても腱鞘炎にならない人もいる。その違いはなんだろうか?おそらく板書することに力を使いすぎている」とも考えました。

そしてなんとなく名前は知っていたアレクサンダーテクニークのことを思い出し、レッスンに通うことにしました。アレクサンダーテクニークは身体の(それは同時にマインドの)不必要な緊張に気づいてそれをやめていくという学びです。腱鞘炎についてはそれこそ1回のレッスンで問題なくなったのですが、その学び自体が興味深いと思った僕はその後もしばらくレッスンに通っていました。

そして同時期にインプロにも出会ったわけですが、僕の中では「これはなんか近いものだぞ」という実感がありました。キース・ジョンストンのインプロは何かを身につけていくというよりも、「人前に立った時の恐怖を取り除いていく」という学び方をするのが特徴です。そして「やめていく学び」という点でアレクサンダーテクニークと近いと感じていました。

大学を卒業した後しばらくはアレクサンダーテクニークのレッスンに通っていなかったのですが、その考え方自体はいつも自分の学びに使っていました。そして3年ほど前にけんさん(このワークショップの相方でアレクサンダーテクニーク教師)に出会って「アレクサンダーテクニークとインプロで何かをやろう」という話になりました。

それから2年ほどは特に何もなかったのですが、僕がアメリカに行って帰ってきてけんさんと話していたときに「やっぱりやろう!新しいことを試してみよう!」ということで今年から不定期でワークショップを始めました。

何回かこのワークショップをやってみて分かったことは、「やめていく学び」という点では共通しているものの、その純粋さはアレクサンダーテクニークの方がずっと純粋だということです。

僕はインプロを日本の中でもかなり「がんばらない」路線でやっていますが、アレクサンダーテクニークの頑張らせてくれなさはインプロの比ではないです(笑)

でもだからこそ生まれる静けさがあって、僕はそれにある種の羨ましさを感じています。そしてそれくらい静かにインプロができてもいいなぁと思っています(もちろんいつもそんなに静かである必要は全然無いけれど、でも静かであれる選択肢は持っておきたい)。

だからこのアレクサンダーテクニークとインプロのワークショップでは、わーっと盛り上がる楽しいインプロというよりも、より静かにそこにいられるようなインプロを目指していきます。

ご興味のある方はどうぞお越しください。インプロがはじめての方でも大丈夫です。どうぞよろしくお願いします。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter