「演劇は関係についてである」

「演劇は関係についてである」とキースは言っていて、僕もその通りだと思っていたけれど、その意味の取り方が変わってきたという話。

以前の僕はインプロとは役と役の関係を作るものだと思っていたし、その関係が変化することで面白くなると思っていた。けれど最近は役と役の関係以前に、役者と役者の関係、もっと大きく言えばそこにいる人間と人間の関係が何よりも重要なのだと思うようになった。

ステージには、おもしろいことをやろうとするためじゃなく、他の人たちと関係を創るために上がってください。観客は、あなたたちが素晴らしい関係をもっていることを観て、それを喜びに感じて笑います。(『キース・ジョンストンのインプロ』p.15)

というキースの言葉に対して、以前の僕は「でもそれだけじゃだめなんじゃないのー?」と思っていた。けれど、ここ半年くらいたくさんのインプロショーを見て、またこれまで自分たちが行ってきたインプロをふりかえって、「実際その通りだなぁ」と思うようになった。面白いシーンはまず役者同士が楽しんでいるシーンだし、役者同士が楽しんでいなければ上手くいっているように見えても面白くはならない、ということがやっと身体で納得できるようになった。

しかしそれと同時に、役者同士がいい関係を持つという「それだけ」がいかに難しいかということも最近になってよく分かってきた。

キースのインプロでは「普段できていることが舞台に上がるとできなくなる」ということがよく言われるし、それは真実だと思う。けれど、「いい関係を作る」ということを考えると普段からできているわけでもないし、そもそもしようとしているかすら怪しい自分がいると思った。

人見知りな赤ちゃんはいても、人に無関心な赤ちゃんはいない。だから本来人は人に関心を持っているし、関係を作ろうとするものだと思う。けれど、そうはいっても赤ちゃんのように純粋な関心を持って人と関わることはできていないなぁと思っている自分がいる。

僕はもともとインプロを教育、特に自己教育(一言で言えば修行)としてやっていて、途中でパフォーマンスにぐっと寄ったのだけど、ここにきてまた自己教育に戻ってきた感じがしている。そしてそれがそのままパフォーマンスに繋がっているということが前よりもずっと分かるようになった。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter