インプロを通して子供になること・大人になること

僕はインプロでも人生でも、昔は子供のようになることを目指していたけれど、今は大人になることを目指している。人は思ったよりもみんな未成熟で、だから何かに不満を抱えながら生きている。

「インプロの考え方はワークショップでは役に立つけれど、実生活では役に立たない」という話があるけれど、僕はこういう問題を立てること自体が問題だと思っている。なぜならそこには「それをやっても評価されないじゃないか」という考えがあるから。

僕はいいインプロバイザーとは相手が自分に何をしてくれるかを考える人ではなくて、自分が相手に何をできるかを考える人なのだと思っている。

だから相手から評価されるかどうかなんてことは抜きにして、ただ相手に貢献しようとすればいい。そして相手に貢献できているという実感があれば、たとえ評価されなくてもそれだけで満足することができる。

戦争は汚い大人が起こすものではなく、未熟な大人が起こすものなのだと思う。赤ちゃんは泣き声で相手を不快にすることによって自分の要求を通そうとする。その泣き声を銃声に変えたものが戦争なのだと思う。

「相手は自分に何かをしてくれるはずだ」と考えているから、思い通りにいかないときに不満を感じる。そしてその不満をまき散らすことによって自分の要求を通そうとする。これは赤ちゃんにとっては妥当な考え方だし、妥当な方法だと思う。しかしこれが全てではない。

大人になるということは、自分の要求を通すいろいろな方法を学ぶことであるし、そもそも「相手は自分に何かをしてくれるはずだ」という考えを捨てて貢献する喜びを発見していくことなのだと思う。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter